地理講習

タクシー入社前のリアル|地理講習と“深視力検査”という見えない壁

タクシー会社に入ることが決まって、最初に言われたのが「地理講習に行ってきて」
ただの地図の勉強だろうと思っていたけど、実際に行ってみたら、そこには想像以上に奥深く、そして意外な“関門”が待っていた。


会社から「6日くらい行ってきて」と言われて始まった地理講習

会社からは「とりあえず6日くらい通ってきて」と言われて始まった、地図講習
初日は地図帳を片手に、都内の主要な建物名や高速道路の出口をひたすら覚えるところから始まりました。

講師は次々と地図に書き込みながら説明していきます。
「この出口は何号線に入って、そこから東関東自動車道につながる」
「ここを抜けると銀座方面に行ける」――
頭の中で地図を動かしながら覚える作業で、初日から情報量が多すぎて頭がパンクしそうでした。

2日目は先生が変わり、YouTube講義に突入

2日目は先生が交代し、いきなり「今日は動画を見てもらいます」と言われました。
流されたのはYouTubeの車載カメラ映像。
「ここからここへ行くルートはこう」「このホテルの駐車場はこう入る」といった、実際の走行映像を見ながらの実践的な講義でした。

最初は「なるほど、これは分かりやすい」と思ったけど、途中からはどこの交差点を走っているのか分からなくなるほど情報量が多い。
それでも“実務的でリアルな内容”だったので、退屈する暇もなくあっという間に1日が過ぎました。

地理講習には“卒業”という概念がない?

週明けから第2種免許の合宿が控えていたので、僕はとりあえず3日間だけ地理講習を受ける予定でした。
3日目もまた動画中心の内容で、「この交差点は左折ポイントがズレている」「このレーンに入ると右折できない」など、現場で役立つ細かい知識をどんどん教えてくれる。

ただ、その一方で思ったのが、「これ、いつ終わるんだ?」という疑問。
どうやらこの地理講習には“卒業”という概念があまりなく、会社としても「6日くらい行ったらOK」という感覚らしい。
テストも修了証もないけれど、確実に実務に直結する内容ばかり。
地味だけど、地図で汗をかく日々が続きました。

合宿免許に行く前の思わぬ壁、“深視力検査”

この地理講習の会場では、同時に第2種免許の合宿説明も行われていました。
そこで初めて知ったのが、合宿に行く前に必ず受けなければならない「深視力検査」
この検査に通らないと、そもそも合宿にいっても講習を受けられないらしい。

最初は「紳士力?マナーのこと?」と思ったけれど、実際は“立体感や距離感を正確に捉える力”のことでした。
車間距離やバック時の感覚をつかむのに欠かせない能力で、普通二種免許ではこの検査をクリアしないと話になりません。

ある研修生が“深視力ゼロ”で大ピンチ

ある研修生が検査を受けたところ、結果は全くの不合格。
担当者も慌てて、「今から〇〇の眼鏡屋さん行って、しっかり見てもらえ」と電話していました。
「ちゃんと見てあげてください」――そのやり取りを見て、「この会社、意外と親身だな」と思ったのを覚えています。

自分も試しに受けてみたら、まさかの“奥深さ”

気になって僕も検査を受けてみましたが、結果は問題なし。
とはいえ、話を聞くと“深視力が足りない人”にはいくつかの傾向があるそうです。

・左右の視力差が大きいいわゆるガチャ目
・片方の目が外や内に寄る斜視(しゃし)

こういった人は立体的な距離感が掴みにくく、場合によってはプリズム眼鏡で矯正する必要があるとのこと。
視力に問題がなくても、立体視が弱いと免許の壁にぶつかる――“深視力検査”はまさにプロドライバーの入り口を測る試験なんだと感じました。

初めて知った“プロの条件”

こうして地理講習と深視力検査を通じて、「タクシー運転手って、ただ運転が上手いだけじゃダメなんだな」と実感しました。
地図を理解する力、道のつながりを覚える力、そして距離感を正確に掴む“感覚”。
どれも現場で生き残るために必要な要素です。

週明けからはいよいよ第2種免許の合宿へ。
本当の意味で「プロ」としてのスタートラインに立つための訓練が始まります。

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