在宅ワークから転職して、タクシー業界へ。 四大大手と中小タクシー会社、2社の面接を受けて見えたのは、 “組織の堅さ”と“現場のゆるさ”。 そして最終的に僕が選んだのは、数字と空気の両方で自分に合う方だった。
ネットの仕事から、外の世界へ
もともと僕は、一人でネットを使って仕事をしていました。 自由ではあったけれど、次第に孤独と不安定さに疲れてきて、 「もう少し外の世界で働きたい」と思うようになりました。
すぐに稼げる仕事を探したときに目に留まったのが、タクシー業界。 資格さえ取れば誰でも始められるし、努力次第で収入も伸ばせる。 そうして、僕は転職活動を始めました。
一社目:大手の面接はきっちり、まるで会社そのもの
最初に面接を受けたのは、いわゆる四大大手のタクシー会社の一つ。 事務所もきれいで、面接室もきちんと整っていて、 担当者の対応も非常に丁寧。 質問内容も細かく、教育制度やキャリアパスについても詳しく説明してくれました。
「ここに入れば安定して働けそう」――そう感じた一方で、 どこか“型にはまった堅さ”も感じました。 教育がしっかりしているということは、裏を返せば厳しさもある。 真面目にやれる人には合うけれど、少し自由に働きたい僕には ちょっと息苦しいかもしれない、そう思いました。
二社目:古びた事務所に流れる、ゆるい空気
次に面接に行ったのは、中堅クラスの会社。 建物は正直、古かった。ソファもくたびれていて、車も年季が入っている。 でも、不思議と居心地が悪くない。 面接も形式ばったものではなく、 世間話の延長のようにゆるく会社の説明を受けました。
「うちはこういう感じでやってるよ」 「頑張ればそれなりに稼げる」 そんな言葉に、堅苦しさは一切なし。 その空気にどこか安心感を覚えたのを覚えています。
決め手は“歩率”──10%の差は大きい
最終的に僕が後者を選んだ理由は、 雰囲気だけでなく、はっきりした数字にもありました。 いわゆる「歩率」の違いです。 これは、売上のうちどれだけがドライバーの取り分になるかという割合。
大手と中小では、この歩率が約10%違いました。 つまり、100万円を売り上げたら10万円の差が出る。 この業界で10%というのは、決して小さくない差です。 教育やサポートがしっかりしている大手に比べ、 後者はゆるい代わりに“取り分が多い”という構造。
僕は、迷わず後者を選びました。 「まずは自分のペースで稼げる環境を選ぼう」 そう思ったからです。
個人タクシーの友人の一言が背中を押した
実は、個人タクシーをやっている友人にも相談しました。 その人はこう言いました。
「後者の方が絶対いいよ。いい意味でも悪い意味でも、雰囲気がゆるゆるだから」
「最初から完璧な環境なんてない。慣れるまでは、ゆるいところの方がいい」 その言葉に妙に納得して、僕の気持ちは決まりました。
ゆるさの中にある、人間味
入社前に事務所を訪れたときも、 所長が笑いながら「いま来たあいつ、本当の出社時間は2時間前だぜ」なんて話していて、 周りのみんなもそれを聞いて笑っている。 普通の会社ではありえない光景かもしれないけれど、 その空気がなぜか嫌じゃなかった。
形式や見た目じゃなく、 人と人の距離感で成り立っている職場。 その“ゆるさ”が、僕にとってはむしろ心地よかったんです。
次回は、いよいよ入社直前の準備と最初の研修案内について。 「タクシー会社の入社手続きって何をするのか?」 そのリアルをお話しします。